そういえばそうだったと、今更気づいた。

私……あのとき肩に万里くんの手を置かれたんだ。

でも……全然嫌じゃなかった。むしろ、言われるまで気づかなかったくらい。

すぐに、首を左右に振る。



「う、ううん、平気だよ」



そんなこと気にしてくれてたんだ……。

万里くん、優しすぎるよっ……。



「今日……万里くんがいなかったら、怖くて何も言えなかったと思う」



万里くんが謝る必要なんて1つもない。



「ほんとにありがとうっ……」



心からの感謝の気持ちを伝えたくて、そう口にして満面の笑顔を向けた。

万里くんは、私を見ながら驚いたように目を見開く。

そして、その顔が赤く染まった。

前にもこんなことがあったけど……今度は、見間違えなんかじゃない。



「……もう、お礼言うの禁止」



万里くんは、私から顔を背けてそう言った。