ケンタはシュウの弟と言う事を受付で伝えると、すんなりとシュウの楽屋へと案内された。


楽屋の前の廊下には、中に入りきらない花束が置かれていて、シュウの受賞を祝っていた。


一息ついてドアをノックすると、久しぶりに聞くシュウの声が聞こえてきた。


「兄貴、入るね」



「ケンタ!!」


久しぶりに見るシュウは正装していて、映画監督としてのオーラが出ていた。


「…兄貴おめでとう」

「ありがとう!!
お前ホント久しぶりだなあ!何回電話しても出ないからホントに心配したんだぞ!!」


「ゴメン、忙しくてね…」


「とりあえずお茶でも入れるから座っててくれよ」


そう言うとシュウはケンタに背を向け、コップとお茶を準備し始めた。



― 今しかない ―


ケンタはカバンに入れた包丁に手をかけた。