「ねぇ、サク」

「ん?」

「どんな手続きをしたら良いのかは分からないけど、家族になるんだったら、もっと幸せな方法があるでしょう?」

「え?」

 サクはキョトンとしていた。見当も付かない、そんな顔をしている。

「結婚」

 予想通り、びっくりした顔で私を見ていた。

「その方法は。正直、思い浮かばなかった」

「だろうね」

 近くて遠い私たちは兄妹。でも、家族。血の繋がらない家族。

 戸籍上の紙切れ一枚を撤廃して、また違った形で家族になれるはずだ。

 いつの間にか子供たちの声が遠のいた気がして公園の出入口に目を向ける。
 彼らはそれぞれの親と手を繋ぎ、笑顔で帰って行く。

 ふと、子供時代の私と手を繋いで帰ってくれていたのは、ほとんどサクだったなぁ、とぼんやり思い出していた。

「私だって好きだったよ」

「え……」

「サクがお母さんたちの話を立ち聞きした頃だったら……私だってとっくにサクを恋愛対象として見てた。
 そのあとも誰か他の人を好きになろうと思ったけど、やっぱり無理だった」

 言いながら穏やかに笑い掛けると、つられてサクも微笑んだ。

 ベンチに座ったままで繋いだ手にキュッと想いを込めた。

 永きにわたる恋心が実を結ぶのは、きっと今しかないと思った。

 私はサクの瞳を確かめるように見つめ、そっと瞼を閉じた。

 やがてサクの空いた方の手が私の後頭部に触れて、グッと引き寄せられる。

 唇に感じる温もりに心臓が激しく打った。

 恋い焦がれてやまなかった初めての甘いキスに、体が熱っぽく疼いた。



    ***END***