近くて遠い私たちは。

 サクの話を聞いていて、あの日の義父の言葉がストンと腑に落ちた。

 ーー「そう言や昔、母さんが言ってたよ。美紅と咲弥がどうこうなるのだけは避けたいって」

 ……あれはその時の話だったんだ。

 サクは遊具で遊ぶ子供たちの様子を見るとは無しに見つめ、眉を寄せた。

「最初の頃こそ、義母さんから好かれたいと思って、色んな事我慢してたんだけどな。さすがに美紅の事だけはキツかった」

「……え」

「お前に辛く当たるのもストレスだったし、家にいる事自体が息苦しくて堪らなかった。
 でも、ある時単純に気付いたんだ。お前に嫌われさえしたら、きっと悲しみはあっても今の苦しみからは逃れられるって」

「……それで、取っ替え引っ替えに女の子を連れて来てたの?」

「……まぁ。そうだ」

 そう言ってサクは言い訳がましく、ポリポリと眉間をかいた。

「それにな。アレは保健体育の授業だ」

「白々しい」

 単純に女の子と寝たかったからじゃないの、と言い掛けて私は口を閉じた。もしかしたらアレがサクにとってのストレス発散法だったのかもしれない、そう思ったからだ。

 急に手の甲に温もりを感じて、ビクッと肩が揺れた。