近くて遠い私たちは。


 7.サクが密かに聞いた事

 それはサクが中学二年生になったばかりのある夜の事だ。

「何だよ、兄妹仲が良いのはいいことじゃないか」

 なかなか寝付けないので、お茶でも飲もうかと思い、今まさにリビングの扉に手を掛けようとした所だったらしい。

「そんなに咲弥が気になるのか?」

 両親の話に自分の名前を挙げられて、入るに入れず、サクは廊下に立ち尽くしていた。

「咲弥は妹としてじゃなく、美紅を恋愛対象として見てるわ」

 義母から正にその通りの事を言い当てられて、ドキッとした。

「そうか……。でも仮にそれが本当の事だとしても、あの子たちには血の繋がりが無いんだからしょうがないだろう?」

「それでも戸籍上は歴とした兄妹なのよ、そんなの絶対イヤよ」

「うーん……そうは言っても、美紅が咲弥を好きになる可能性だって有るし。そうなったら親とは言え、僕たちには何も言えないよ」

「だから言ってるの。あなただって知ってるでしょう? 美紅は女の子らしくて本当に良い子に育ってるわ。あんなに可愛いんだもの、この先恋愛だって沢山すると思う」

「……うん、まぁ。そうだろうね」