近くて遠い私たちは。

 私は相変わらず飄々とした態度で、食後のコーヒーを堪能する。

「んだよ、そんなに居心地が良いのかよ、この部屋は」

「サクがいるからね?」

 私はサラッと言いのけて、正面の彼をジッと見つめた。意味深に目を細め、口端を吊り上げる。

 サクは真顔で黙ったままだった。いつもならすかさず、「兄貴と呼べ」と注意されるのに、サクは何も言わなかった。

「ねぇ。サクは嫌? 私がいるの」

 訂正されないのをいい事に、私は調子に乗って続けた。彼はグッと口を引き結んで、顔を背けた。

「そーだよね、嫌だよねぇ。だって彼女呼べないんだもんね?」

「……別に。そんな事は言ってない」

 やがて、サクは若干赤くなった顔でポソっと続けた。

「お前さ……。まだ馬鹿みたいに俺の事を好きとか思ってんの?」

 チラッと彼の視線が飛んでくる。サクにしては弱々しい、自信の無い瞳だった。

「思ってるよ?」

 ストレートに告白などしてやるものか、と。自分の意地からずっとそう思っていたけれど、私は彼の甘えを帯びた表情にまんまと(ほだ)されていた。

「私が好きなのはずっとサクだけだよ? 子供の頃から、ずっと……」

 サクはびっくりした顔から一変、僅かに泣きそうな顔をした。

「……だから、シュミわりーって」