近くて遠い私たちは。


 6.そばにいたい

 サクを攻略するには、純粋に妹という枠組みから出る事だと思った。

 かと言って、昔そうしたようにストレートに告白するのも何だか癪だ。サクを誘惑しようと考えた空回りばかりの努力も一切止めた。

 とにかく、何が何でもこの部屋に居座り続ける事が重要だと考えていた。

 四月になり、私は就職の決まっていた広告代理店で働き始めた。

 基本、土日が休みの会社で福利厚生もしっかりしているので安心して働けた。

 お給料も割と安定していて、頑張れば一人暮らしをする貯金も直ぐに貯まると思った。貯めるだけ貯めて、出る気などさらさら無かったのだけど。

 出来るだけ節約して、毎朝サクと私の分のお弁当も詰めた。そうした日々が三カ月続き、いよいよサクが私との約束について話を切り出した。

「なぁ、美紅。まだ部屋見つかんねーの?」

 仕事に出る前の朝ごはんの時間だった。サクは私が用意したサラダとスクランブルエッグを食べながら、さりげなく尋ねた。そんな彼に、

「探してない」

 私はあっさりと自白した。

「はぁ?」

 サクは怒るでも慌てるでも無く、ただただ呆れ果てていた。

「お前……。彼氏いないのかよ?」

「いないよ? てか、いた事無いし」