近くて遠い私たちは。

 早歩きで急いでいるのに、男の子は大股で歩き、普通に付いて来る。

 ーーてか、チャラい。全然タイプじゃない。

「……美紅っ!」

 程なくして、こちらに駆けて来るサクの姿が目に入った。

 薄着で飛び出した私を心配してくれたのか、腕に私のコートを持っている。

 サクが私を見てから、隣りのチャラいお兄さんを見て、眉を潜めた。何コイツ、とでも言いたげだ。

「なんだ、彼氏いるのかー」

 チャラいお兄さんは残念そうに呟き、肩をすくめて去って行った。

「美紅。何だよ、アイツ」

 幾らか不機嫌なサクからコートを受け取り、すぐに羽織った。私はサクを見上げて首を傾げる。

「知らない」

 素っ気なく言い放ち、私は先に帰路を進んだ。心配して迎えに来てくれたのは嬉しいが、それは妹に向けられた感情だ。

 鈍感色欲男に、私はまだ腹を立てていた。

「おい、美紅。何怒ってんだよ?」

「怒ってないし」

 三月の寒空をサクと二人で歩み続けた。