5.私の空回り
サクの部屋で居候を始めて、三週間が過ぎた頃。私はサクに付き添って貰い、義父と会う決心をした。
「美紅、本当にすまなかった…っ!」
居間のソファーに座るなり、義父は私にガバッと頭を下げた。
久しぶりに入る居間は雑然としていた。戸建ての家に、義父だけの一人暮らしを余儀なくされたせいか、雑誌や衣類などがそこここに置かれ、シンクに至っては使用済みの食器やプラスチック容器などで溢れ返っていた。
ゴミも指定日にきちんと出せていないのだろう、黒いゴミ袋が二、三個固めて置いてあった。
「父親失格なのは重々に分かってる。娘のお前にあんな事して傷付けて、本当に申し訳なかった」
義父は俯いたままで、膝に置いた手をグッと握り締めた。
「もう、いいよ。お義父さん」
「……美紅」
「私もちょっと甘え過ぎたよね」
そう言って、本当に自然と笑みが浮かんだ。義父はグッと口を引き結び、目に涙を滲ませていた。
それからはサクと協力して、実家の片付けを始めた。シンクの洗い物とゴミを分別して洗う物は洗い、食器棚に仕舞っていく。要らない雑誌はビニール紐で縛り、洗濯物は洗濯してから乾燥機で乾かした。
溜まったゴミはまた指定日に出しに来ると約束をした。



