近くて遠い私たちは。

「ずっと一人で暮らしたいと思ってたんだよなぁ」

 サクがウースケたちを見ながらポソっと呟いた。

「あの家では何にも飼えなかったから」

 ーーそれで一人暮らしを始めたの?

 私はぼんやりとサクを見つめるだけで、問いは声にならなかった。

 *

「なぁ、美紅」

「なに?」

 翌日の夕食時、ほとんどサクが作ったパスタをフォークに巻いて食べていると、何の気無しにサクが言った。

「親父が美紅に謝りたいって言ってるんだけど……どうする?」

「え」

 私は手を止めて、正面のサクを見つめた。

「どうって……」

「あの事が有ってから、まだ二週間ぐらいだけど。会えそうか?」

 私はキュッと唇を噛み、お皿のカルボナーラに目を落とした。

「……分かんない。けど正直、まだ……。お義父さんの顔は見たくない」

 サクは目を細めて息をつき、「そうだよな」と呟いた。

「美紅の気持ちが落ち着いてからでいいから。出来れば俺は、和解して欲しい」

「……うん」

 私だって出来る事ならそうしたい。あの夜は全くの別人だったけれど、お義父さんが僅か八歳の私をここまで育ててくれたんだ。

 私がこの歳になるまでは、本当の娘として可愛がってくれていた。

「そんなに時間はかからないと思うから。落ち着いたら、また言うね?」

 私は顔を上げ、サクに笑顔を見せた。