近くて遠い私たちは。

 私は生き物について詳しくないので、サクから聞いた生き物の名前をメモして覚えた。サクは一人暮らしを始めてから、ヒラタクワガタやミシシッピニオイガメ、ウーパールーパーを飼い始めたらしい。

 中でもリューシスティックという種類のウーパールーパーが珍しくて、初めて見るその魚類のようなものに少なからず愛着が湧いた。聞くと魚類ではなく、両生類らしい。

「ウースケのこの黒目が堪らなく可愛いだろ? 赤いエラもこのちっちゃな手足も、見ていて癒されるんだよなぁ」

 そう言ってサクは、子供の頃みたいに瞳を輝かせて笑った。

「ふふっ、でも名前は安直だよね?」

「いーんだよ、愛情はあるんだから」

 サクは恥ずかしそうに、少しだけ頬を赤らめた。生き物の名前が安直だというのは、一応自覚しているらしい。

 ヒラタクワガタのヒラタくん、ミシシッピニオイガメのミシェル、ウーパールーパーのウースケ……なんだかサクらしい。

「俺が居ない時、コイツらに異変があったら教えて欲しい。ヒラタやミシェルは割と元気で変わりないと思うけど、ウースケはデリケートだから」

「分かった」

 餌のあげ方や体調が悪い時の特徴などをサクから詳しく聞いてメモした。

 本当は犬や猫を飼いたいとも思っていたそうだが、このマンションはそういう大っぴらなペットは禁止らしい。