近くて遠い私たちは。

 帰り道、重いレジ袋を持つのは決まってサクで、私はお菓子やパンなど比較的軽い荷物を渡された。

 車の往来がある道では、さりげなくサクが車道側を歩いてくれる。

 私が会話に夢中になって歩いていると、時に腕を引かれて、すぐそばを自転車が走り抜けて行った。

 周りの状況を見て咄嗟に判断するサクに、私は守られていると感じた。

「ったく。危なっかしいやつだな」

 サクは呆れて眉を下げる。私はそんな彼の言動にも幸せを感じていた。

「えへへっ、ありがとう」

 母との死別や義父の豹変ぶりがあったせいか、サクは気持ち悪いほど優しかった。嬉しいけど……。期待してしまう。

「ねぇ……。本当に私、家賃とか生活費出さなくていいの? バイト代ぐらいだったら少しぐらい」

「いいって。余計な心配するな」

「だって……私だってご飯食べてるし」

「馬鹿。美紅一人の食費ぐらい何て事ねーよ。ほら、入るぞ?」

 話をしていたら部屋までの道のりはあっという間で、私はサクに促されて先に靴を脱いだ。

「あ。そうだ。心配ならこいつらの事だけ気にかけてやってくれ」

「え?」

 部屋に入ってから、サクはクローゼットの中を指差した。

 後になってから知った事だが、サクは部屋のクローゼットの中で数種類の生き物を飼っている。

 虫かごや水槽が合わせて三つ置いてあった。