近くて遠い私たちは。


 4サクとの生活

「仮にも居候なんだから、家事は分担な?」

 サクの部屋に連れて来られてから、当分はここに住んでも良いと言われた。だから私もお金を貯めて、一人で暮らせる部屋が見つかったら出て行くとサクに約束をした。

 布団はサクの言葉通り、翌日の仕事帰りに実家から運んで貰った。

 私の私物に関しては、義父が仕事に出ている時間を見計らって自分で取りに戻った。

 義父に襲われそうになったあの夜から二日が過ぎて、今日からまた大学にも通い始めた。

 幾らバイトをしていると言っても、お小遣い稼ぎに週二程度のシフトで入っているだけの私に比べて、社員で働いているサクは圧倒的に忙しかった。

 洗濯や掃除はほぼ私が引き受けて、買い物などお金が掛かる事はサクの担当で、料理は二人で並んでするのが常となった。

 すぐそばにサクがいると思うと、私は始終浮かれてドキドキしっぱなしだった。

 料理をする時。腕まくりをして、葉脈さながらの血管や筋が浮き出る腕を見ると、訳もなく鼓動が早まり、顔の中心がカァと熱くなった。

 ーーそんな筋肉とかあるんだ。サクのくせに……。

 私とは違う、男の人の逞しさを感じた。

 サクが休みの土日は、二人で食材を買いにも出掛けた。歩いて行けるスーパーに行き、欲しい野菜やお肉を買って帰る。