近くて遠い私たちは。

「もうっ、バカバカ言わないでよ?」

「いいや、言うね。大体美紅は日頃から女としての自覚が足りなさすぎる。だから義母さんも散々お前の事を心配してたんだろうが!」

「分かってる、よ。そんな事」

 私はサクから目を逸らした。

 本当は分かってなどいなかった。私としては、自分が女だという性を充分に理解していたつもりだが、きっとサクが言いたいのはそういう意味じゃない。

 少なからず、母の事を引き合いに出されて狼狽えた。

「とにかく今日はもう寝ろ」

 サクが指でつまんだ煙草をキュッと灰皿で揉み消した。

「さっき言ってた匂いの話なら、俺は全く気にしないから。無理やりにでも、ちゃんと眠れ」

「……うん」

 梯子に昇る手を掛けたところで、「ねぇ、兄貴」と振り返る。

「眠れるまで手を繋いでて欲しいって言ったら……いや?」

 サクはポカンと口を開け、唖然としていた。

「お前……。調子乗りすぎだろ?」

「ごめん」

 結局のところ、サクは私のお願いを聞いてくれた。

 ロフトに上がり、天井の低さから座る事を断念して、寝転がった私の横に添い寝をしてくれた。そのまま私が眠りにつくまで、ずっと私の手を握っててくれた。