近くて遠い私たちは。


 3.サクの部屋

 サクの部屋は思っていたより殺風景だった。六畳一間のワンルーム。テレビ台やパソコンを置く机、食事をするための簡素なテーブルはあるけれど、ソファーやベッドなんかは置いていない。

「そんな物置いたら部屋が狭くなるだろ?」

 それに、と言ってサクは上を指差した。

「元々ロフト付きの部屋だから、ベッドは要らないんだよ。上で寝りゃいいんだから」

「そっか」

 そう答えたものの、私は今夜どこで寝れば良いのだろうかと考え、暫し頭を悩ませる。

「美紅が嫌じゃなければ、今日のところは俺の布団使えよ?」

「え。それじゃあ、兄貴は何処で……」

「ンなもん適当だ。床でも寝れるし、一緒の空間が嫌なら部屋を出て車でも寝れるだろ?」

「車って。サクの部屋なんだから、わざわざ外に出る事…」

 そう言ったところでジロリと横目を向けられ、しまったと口を押さえた。

「お前な。ちゃんと兄貴って呼べよ」

「ご、ごめん……兄貴」

 そうだ。いくらサクが優しくても、呼び方だけは間違えちゃいけないんだった。

「美紅の布団とか服は、明日仕事帰りに実家に寄って運んでやるから。今日は何も考えずに眠れ」

「うん、ありがとう」

 ロフトへ続く梯子を昇り、私はそのままの服で寝る事にした。こんな事なら早めにお風呂に入っておけば良かった。

 サクはクローゼットの隅から毛布らしきものを引っ張り出していた。