近くて遠い私たちは。

 ーーうそ。私……サクに抱っこされてる……?

 階段を降りて玄関を抜けた所で、サクがボソッと言った。

「とりあえず今日は。俺んとこ行くぞ、いいな?」

「……うっ、うんっ」

 不意にさっきまでの恐怖が体に戻ってきて、私は横抱きされたまま、サクに抱き付いた。

「って、おい、美紅……?」

 ずっと恋焦がれていた体温が目の前にある。私はサクにしがみ付いたままで泣きじゃくった。

 仕方ないとまた溜め息をつかれてから、サクはすぐそこの駐車場までを歩いて行く。

 車の助手席に下ろされてからも、暫くの間、私の涙は止まらなかった。