「……え?」

 その一瞬、義父の瞳が妖しげに光り、大きな手が私の肩を押した。

「お、とう……??」

 私は義父に押し倒されて、あっという間に馬乗り状態に追い込まれた。

 余りの衝撃で声が出ない。

 目はパッチリと見開いた状態で、私を上から見下ろす義父をちゃんと見ているのに、今の状況を理解するのに頭が追いつかない。

「そんな怯えた顔しても駄目だよ? お父さんの方が力は強いんだから」

「……っ、いや」

 脳がようやく危機的信号を送り、ぶるぶると手足が震え出す。息が上がる。

「いやぁっ、やめてよ! お義父さん!」

 義父の体を押し退けようと両手で抵抗するが、あっさりと手首を掴まれて万歳の姿勢で、片手だけで押さえつけられる。もう片方の手は私の口を塞いだ。

「そんな大きな声を出しちゃ駄目だよ? 美紅はいい子だから分かるよね? ご近所さんに迷惑だ」

 義父の豹変ぶりに恐怖が募り、目から熱い涙が込み上げる。

 ーーなんで?

「ああ、可愛いなぁ。美紅は。泣き顔なんて最高だ」

 ーーなんでお義父さんは、こんな事するの?

「んう…っ」

 急に義父の顔が迫って来てギュッと目を瞑る。私は顔を背けて、力の限り抵抗を試みた。

 ジタバタと身動きしたいのに、義父の言葉通り、その力は圧倒的でビクともしない。