母の他界は、見事に私の生きる気力を削いでいった。

 葬儀から数日が過ぎても、ろくに食事も取れずに体重が減った。病的にやつれる私を見兼ねて、サクが暫く実家で寝泊りする日が続いた。

 義父とサクに心配されながら、私はサクが作ってくれたご飯を少しずつでも口にした。最初は何を食べても味が分からなかった食事だが、そんな日々が十日も続くと以前の半分はちゃんと食べれるようになった。

 僅かながらでも気力が戻って来ると、私はサクの心配をするようになった。

 自宅にも帰らずに妹の面倒をみたりして、仕事に支障をきたしていないのか、と。

「俺の事よりも、今はお前の事だろ? ちゃんと食って早く元気になれ。大学もずっと休んでるんだろ?」

「そう、だけど。でも、もう……良いよ? 私、前より食べれるようになったから」

 居間のテーブルで取る朝食の時間。本来なら遅刻かもしれないのに、サクが融通を利かして私のそばに居てくれるのを、勘付いていながら今日まで黙っていた。

「そうだぞ。美紅もこう言ってる事だし、お前こそ真面目に働かないとまずいだろう?」

「お義父さん」

 滅多に口を挟まない義父が、珍しく厳しい顔付きでサクに言った。

「美紅の事はお父さんが面倒をみるから、お前もそろそろ自分の生活を心配しろ」

 義父が息子を心配して言っているのに、サクはあからさまに顔をしかめて、「ああ、そーかよ」と吐き捨てるように言った。