放課後になり、家に帰って今日を思い出して。

何事もなく…、いや何事はあったな。

羅島さんと坂下は必ずカップルになるだろう。

私はよく色んな人から『ポーカーフェイスだね』と言われるけれど、  

多分それは坂下への想いを隠すために、表情を無くすのが得意になっただけだと思う。


小学校のときも、中学校のときも、  

決まって彼の近くには女の子がいた。


やきもち妬いてる場合じゃなかった。

怒っても「キレんなウザい」と言われるだけだろうし。

こうして高校生になった今、今日羅島さんに坂下のことを聞かれたように、

『坂下美夜の仲良い幼なじみ』という枠に、私はいる。

その枠からは、一歩も外に出られない。 


…彼女。それは私から遠く彼方に位置している。

そして今、羅島さんが最も近い位置。


「なんで、幼なじみなんだろう…」


そうじゃなかったら、辛くなかった?

押し殺しても押し殺しきれない想いは、どこに捨てたら良いんだろう。

「私も彼氏欲しいなぁ…」

なんて、宿題しようと広げた数学の教科書を見つめながら思う。

…隣の席の片桐響紀(かたぎりひびき)くん、今日数学教えてくれて優しかったな。

まぁ、

そんなこと思ったってバスケ部の爽やか軍団の1人の彼は、

これまた運動部の可愛い女の子と付き合ってたりするんだろう。


平凡で、それで無愛想な私。

頑張って、少しずつでも笑えるようにならなきゃ一生1人かもしれない。

幼なじみへの恋心の代償に失った笑顔というのはあまりにも大きくて、

それでも乗り越えなければいけない壁だった。