「そうなんだね、ありがとう佐々木さん。私頑張ってみようかなぁ…」

へへ、とはにかみながら手を振って自分の席に戻る羅島さんの後ろ姿を見て、

あぁ、

可愛くて良い子なんて私が男子だったら絶対彼女にしたいや。


そう思って、なんだか寂しくなった。



そうして先生が来て、チャイムが鳴って、

数IIの授業中。

静かな教室だけど、解けない問題をヒソヒソと教え合うことは許されている。


私は成績も平凡の平凡で、まぁ順位も半分より少し上ってくらい。

すなわち、解けない問題も多い。


今回の単元は特によく分からなくて、

黒板と自身のノートを見比べては静かに落胆している。


そうしていると、コンコン、と私のノートを隣の席の人に軽ーくシャーペンで叩かれて、

隣を見ると、片桐くんが

「大丈夫?俺分かるから教えようか?」

と、囁いてくれた。

なんて優しい人なんだろうかと思いながら、

「お願いしていい?」

と言うと、彼は微笑んで顔を近づけて、

「これが…、そうそう、だから代入して…」

と分かりやすく丁寧に教えてくれる。

飲み込みの遅い私でもなんとか理解できるのだから彼は教え方が上手だ。


「じゃあ、ここからは自分で解いてみて」

そう言って、最後の肝心なところは私に解かせてくれる。

彼の言われたことを思い出せば、しっかりと解を導き出せた。

そのことが嬉しくて嬉しくて、滅多に私は自分から男子にも話しかけないけれど、

片桐くんの肩をトントンと軽く叩いて、

「解けたよ!片桐くん、ありがとう」

そう言って、

思わず嬉しくて珍しくニッコリと笑っていると、

彼は少し照れたように耳を赤く染めて、  

「…あぁ、うん、良かった」

そう言って、優しく微笑んでくれた。