なんだかその声は辛そうに聞こえて。
私の後ろにいるゆーゆは、
私の耳元でコソリと、
「私ね、今日もすっごく楽しかったから満足したんだぁ。」
「あとは私1人でお買い物するから、音ちゃんは坂下くんのそばにいてあげてねぇ」
と微笑んだ。
そして、
美夜の前まで出て行き、
バサリと、そのウィッグを外しながら言った。
「音ちゃんね、今日私にたくさんお話してくれたの」
「坂下くんのこんなところが優しいとか、本当は10年以上片思いしてたからやっと実ったんだとか」
「…だからさ、もう少し信じてあげてよ。」
わざわざセットも大変だろうに、
『女子』であることの証明にウィッグまで外してくれて、
こうして、私の言いたいことも言ってくれる。
本当に、優しい親友だ。
そんなゆーゆに、
「…ごめん、本当。女子に手あげるところだった」
そう言って謝る美夜に駆け寄って、
「…美夜、一緒に帰ろ」
そう言いながらそばに行き、
ゆーゆにアイコンタクトをすると、彼女は微笑んでくれた。
落ち込んでいる様子の彼と一緒に、ショッピングセンターを出て、
電車に乗ってひとまず家の方向へ。
「…音葉、怖がることとか絶対しないから、俺の家来ねぇ?」
そう言って控えめにされた提案に、
「…うん」と頷いた私。
彼の両親は2人ともよく働く人で、
土曜日も夜まで家にいない。
本当だったらのこのこ男の人の家になんて上がっちゃいけないものだろうけど、
今の美夜を1人にするほうが、
私には出来なかった。



