もう俯いてこちらを見ない美夜に、


私は話し始めた。



「確かに、私は片桐くんに告白された。でも断った。」


そう言うと彼は驚いたように顔を上げて、

私を凝視する。



「…私ね、小さい頃からずっと好きな人がいるの」


ずっと言いたかった、だけど言えなかった。


もう、無かったことにしようとしてた想い。



私がそれを言い出そうとすると、

美夜は怯えたように両手で耳を塞いで、



「嫌だ、聞きたくねぇよ」



と、聞くのを拒もうとする。


美しい、その綺麗な顔を苦痛に歪ませながら。



私はその美夜の両手をそっと離して、意を決して告げた。


 


「私は、坂下美夜が好きです。」






そう言った瞬間、


美夜は「ん?という顔のままフリーズして、



その言葉を理解した途端に見たこともないくらい顔を赤くして、



それを恥ずかしそうに手のこうで隠しながら、


「…嘘だ、夢だ、うん、俺この夢に住みてぇな」


とか変なことを言い始めたから、



ちゃんと美夜の目を見て、私は言った。




「嘘じゃないよ、ずっと美夜が好きだった」


と言うと、なおも彼は信じられないというような表情のままに、


「そんなこと言ったら、俺音葉のこと離す気まじでねぇよ?」


そんなことを聞いてくる。



それに私は頷いて、



「いいよ、離さないで」と答える。



「…他に好きな人できたのって言われたら、俺殺人犯になる可能性が」


そんな恐ろしいことを言われるけど、


「他に好きな人なんてできないから罪は犯さないで」



そうやって、本心を答えるんだ。




これが最後、というように美夜は聞く。




「…今ならまだ、俺から逃げられるけど」




ゾクゾクするような妖艶な瞳に囚われて、


私は答える。



「逃げないから、はやく捕まえてよ」




そう言うと、


彼はその表情に、狂喜、歓喜、そんな感情を携えて、


それでいて、冷静に。



その両手で私を優しく抱きしめて、



世界でいちばん甘いキスをくれた。




そして、耳元で色っぽく囁く。




「…やっと捕まえた」





とんでもない重さの愛情を注いでくれる、


器用なのにどこか不器用な彼は、



今日、私の彼氏になりました。