それから
片桐くんは「また友達として仲良くしてくれたら嬉しい」
と笑いながら言ってから、
部活をしに体育館へ走っていった。
本当に本当に、良い人だなぁ。
そして私も教室に戻り、クラスにはちらほら人がいるというくらいだった。
スクールバッグを肩にかけてから、
スマホをいじって待ってくれている美夜の元へ行って、
「美夜!待っててくれてありがとう」
と言うと、
彼は顔を上げて、何だか少し寂しそうな表情で
「…帰るか」と呟いた。
どうしたのかと思いながら学校を出て一緒に帰っていると、
私たちが幼い頃よく遊んだ公園の横の道に出た。
そのとき、ずっと黙っていた美夜が
その公園を指さして、
「少し話さねぇ?」と言ってきたので、
「いいよ」と私はそれについていった。
私がベンチに座っていると彼は自販機のところへ行って、
自分のだけでなく私の飲み物まで買ってくれた。
私の好きなジュースを手渡されて、
その思いやってくれる優しさにキュンときてしまった。
ちょっとした沈黙が続いたあと、
彼は重い口を開いて、
「…音葉は片桐に告白されたんだよな?」
と声を震わせながら聞いてきた。
それに私は、「…うん」と頷く。
肯定の返事をすると、
彼は俯いてもう話さなくなってしまった。
「…美夜?どうしたの?」
と聞くと、彼は少し自嘲気味に、
「俺さ、可笑しい人間なんだよ。音葉のことが好きすぎて狂ってんだ」
「音葉が他の男のものになるって考えただけで正気じゃいられない」
「…ごめん、だからずっと隠してたんだけど」
『好きになってごめん』
そう言う彼は、大きな勘違いをしている。



