そんな日。
いつも通りだと信じて疑わなかった日の放課後。
さぁ、帰ろうとスクールバッグを手に握ったとき、
「…おいお前、今から暇だろ?」
ぐいっと右腕を強い力で引っ張られたかと思うと、
降ってきたのはそんな乱暴な言葉。
見上げると、
「…何、坂下」
それは、坂下だった。
中性的な見た目で、
恐らく女装させたらただの美女になるであろう彼は、
その見た目に似つかわしく、私にだけ露骨に乱暴な言葉遣いをする。
今も、その美しい見た目には反して、
冷たい瞳だ。
彼の言葉の続きを待つ私なんてお構いなしに、
「腹減った、飯食い行く」
それだけ行って、右腕を掴んだまま引っ張っていく。
長身の彼は歩いていくけれど、
にしてはゆっくりの歩幅で歩いてくれている。
そんな思いやりには、
気づかないフリをしなきゃ。
思い出すと、中学のときもこんなことがあった。
彼の気が向くままに一緒にどこかへ行って、
冷たいのに、何故だか優しくて。
扱い方を気にせずにいられる私の側は、楽なんだろうとも思う。
…まぁ、それは完璧に女子だと思われてない証拠だろうけどね。
小学生のときには私と同じくらいの背だった彼に、中学で抜かされて、
あぁ、もうこんなに身長高いんだな。
それがなんだか知らない人みたいに思えて寂しくて、
これは、ただの幼なじみとして感情なんだと、再認識した。
…再認識じゃなくて、思い込もうとしていないか?
そんな自分自身への疑問は無視をして、前を歩く、
少し、ゆっくり歩いてくれている
彼について、ファミレスまで向かった。



