「さ、戻るぞ」


そう言って、
屋上の扉に向かった遥先輩が
くるりと振り返り、

柔らかく頬を崩す。


「あのさ、鈴之助はもう大丈夫だよ。
凛花が思ってるほど弱い奴じゃない。

だから、あいつのこと
もっと信じてやれば?」


「え?」


「だから、
ひとのことばっか心配してないで、

もっと自分のことも、
心配しろってこと」


ポンっと私の頭に手を置いて
優しく視線を緩める遥先輩を

じっと見つめる。


「私のまわりで一番の危険人物は
間違えなく、遥先輩だと…」


「ははっ、そうだよな」


気持ち良さそうに空を仰いで
目を細めた遥先輩に

ドキリと心臓が飛び跳ねて
慌てて遥先輩から目をそらした。