「じゃ、あとで迎えにくるからな。
勝手に学校行くなよ」


不思議なことを
言い出した遥先輩を

キョトンと見つめる。


「へ? どういう意味?」


「だからさ、つきあってるんなら
一緒に登校するのが普通だろ」


「つきあってないから
ひとりで行くね?」


「ちがうんだよなー。

朝の俺は口が軽いんだよなー。
血圧低いからかなー。

どういう訳か、
無意識のうちに、
ペラペラとしゃべっちゃうんだよなー。

鈴之助のこととか、鈴之助のこととか。

それから鈴之助のこととか?」


「……つまりは脅迫?」


「まあ、はっきり言えば?」


遥先輩の笑顔が、
妖しくひかる。


「私と一緒に行っても面白くないよ?」


「つうか、車ン中、退屈だし」


「は? 遥先輩、学校まで車で行ってるの?
電車ですぐなのに?」


「だって、かったるいじゃん。
今日なんて、走っちゃったし、無理」


……啞然として
遥先輩を見つめる。


「朝、一緒に走らないでいいから、
ちゃんと自力で学校行った方がいいよ。
最低限、人として……」


「は? なんか言った? 
鈴之助のお姉ちゃんの凛花ちゃん?」


く……

お姉ちゃんじゃなくて、いとこだしっ!


そもそも、

どうして、遥先輩が私にこだわるのか、
全然わからない。


でも、遥先輩に逆らったら
なにをされるやら……


あれやこれや悩んだものの、

遥先輩に抗うことなど
できるはずもなく、

結局、一緒に
登校することになってしまった。