こんな溺愛、きいてない!

「さ、行きましょう、遥先輩っ!」


スタスタと早足で歩きはじめると、
高い歓声があちらこちらから
聞こえてくる。


「神楽坂先輩~!」


「遥くん、こっち向いて!」


「HARUKA〜!」


すごい、まるで芸能人……。


あれ? 


そういえば、
遥先輩も鈴之助と同じ事務所に
所属してるって言ってたような。


……ん? 芸能人?


ハルカ……?


ま、まさか……。


185センチは余裕でありそうな
高身長に日本人離れしたスタイルのよさ、

そして顔面偏差値の超絶に高い遥先輩を
おそるおそる見あげて、ハッとする。


「も、もしかして、遥先輩って、
モデルのHARUKA……だったりする?」


「え? うん」


しれっとしてるけど、超人気モデル……ですね。


ものすごくオファーが殺到してるのに、
特定の仕事しか受けない
超人気モデルが事務所にいるって、
鈴之助がよく話してる。


……というか、愚痴ってる。


スタスタと早足で歩き、
人のいないところまで
来たところで、

遙ちゃん……、改め、

華やかなオーラを
これでもかというほど放っている
遙先輩を見上げて
大きなため息をつく。


はああああ。


こんなに派手なひとと
一緒に帰らななきゃいけないなんて、
なんの業だろう?


そして、
この生活の、
どこか静かな高校生活なんだろう?


私はどこでなにを
間違ってしまったんだろう?



「あのさ、もう少し喜べよ。
カレシが出来たんだからさ」


「あ、はい、そうだね」


って、なにが? カレシ?


「あれ? 
カレシってどういう意味だっけ?」


キョトンと、
遥先輩にたずねてみる。

脅迫しあう関係のことだった?


「一般的には、
エロいことする相手のことだよな」


「はい、さようなら」


遥先輩と私の常識は
だいぶ違っているらしい。


ヒラヒラと手を振って、
競歩で遥先輩から距離をとる。


すると。


「あーそういえば、昨日の鈴之助、
よかったなーーーー」