「だからこその、この静けさ! 
穏やかさ!
地味で目立たないことが、
いかに尊いか!

遥ちゃん(仮)はなにも知らないから
そんなこと言えるんだよっ」


「大げさだな」


「あのね、そんなこというけどね。
うち4回も引っ越ししたんだよ?」


「は? なんで?」


「家バレして! ホントに怖いんだよ。

夜中にも知らない人が
いきなりやって来て、
盗撮されちゃうんだから!

鈴之助が
インスタにあげたベランダの景色で、
住所がバレちゃうんだから!

サングラスにうつった電柱一本で、
マンションが
分かっちゃうんだから!

でも鈴之助が
独り暮らしは
したくないっていうから!

遥ちゃんには、
この苦労はわからないよっ」


日頃のうっぷんを晴らすかのように、
一気に吐き出す。


「……あのさ、お前、
その『遥ちゃん』って、
どうにかならないのか?」


「お願いします。
本当に、お願いします」


もはや、最後は涙目で。