「へ、なに土下座してるの? 
つうか、土下座してるヤツ、
初めて見た。

土下座って本当にするもんなんだな。
なに、お前、サムライなの?」


訳の分からないことを言っている
遥ちゃんを無視して
懇願する。


「どうか、鈴之助のことは
ご内密にお願いしますっ」


額がコンクリートの床につくほど
深く頭をさげる。


「なんで? 別にいいじゃん」


キョトンとしている遥ちゃんに、
視線を尖らせる。


「全然、よくないよっ。

私が必死に死守している
この静かで穏やかな高校生活が、
瞬時に崩壊しちゃうんだからっ」


「意味わかんね」


吐き捨てるように呟いた
遥ちゃん(仮)の胸ぐらを
ガシっとつかんで、ぐらりと揺する。


「この静かで穏やかな生活を
手に入れるためにどれほど苦労したか
遙ちゃん(仮)に分かる?」



「『静かで穏やかな』じゃなくて、
『ダサくて地味な』高校生活だろ……」


バカにするようにつぶやく遥ちゃんに
断固抗議する。