大騒ぎになった校内では、たくさんの生徒が一斉に特別棟に押し寄せていて、大混乱。



ああ……、これじゃ、きっと撮影中止だろうな。



裏門にも人は集まってるだろうし、鈴之助、無事に脱出できるかな……。



鈴之助の身を心配していると、校舎のあちらこちらから甲高い悲鳴が上がる。



「ねえ! 校庭!」



その声に視線を動かすと、校庭の真ん中に立って、校舎に向かって手をふる鈴之助の姿があった。



キャップもマスクもはずして、校舎の窓から顔をだす生徒たちみんなに手を振って、太陽も怯むような最高のアイドルスマイルをキラキラと炸裂させている。



校庭に上履きのまま飛び出した子たちのなかには、鈴之助に抱きついて泣いている子もいる。



先生たちの静止なんて全く役には立たなくて、鈴之助は校庭に集まってきた子たちと、握手したりハグしたり。



そんな鈴之助の姿に、校舎からはさらに大きな歓声が上がって、その光景に喉の奥がぐっと熱くなって、涙が浮かぶ。



鈴之助、みんなから、愛されてるんだ……。



大騒ぎになっている教室をそっと抜けだすと、ひと気のない廊下のすみでこっそりと涙をぬぐう。



そのとき、ぽんぽんと頭がなでられた。



「鈴之助、さすがだな。撮影中止になっても怒りもしないで、全校生徒にアイドルスマイル振りまいて、ファンサービスまでして完璧な対応。神対応って早くもネットで騒がれてるよ」



私の泣き顔を隠すように、遥先輩の両腕が私をやさしく包む。



「良かったなって、思う。鈴之助、ずっと学校に居場所がなかったから。でも、頑張って、頑張って、すごく……すごく努力して、みんなに受け入れてもらえる場所を、自分で作ったんだね……」



ぽたぽたと廊下に落ちる涙は、隠しようがない。



「よしよし」



そっと頭をなでられて、大歓声で校舎が揺れるなか、廊下の隅で、遥先輩の胸のなかで泣いていた。




Fin