「凛花に会いたくて、会いに来ちゃった」



「し、仕事は⁈」



「うそうそ、凛花に会いに来たっていうのは、冗談。今、学園もののドラマ撮ってて、今日だけこの学校借りて撮影してるんだよ。ほら、うちの社長とここの学園長、仲いいから」



「で、でも、こんなことろで撮影してることがバレたら」



「うん、大変だよね」



鈴之助は呑気にニコニコと笑顔を煌めかせてるけど、笑ってる場合じゃないよう
な……



バレたら大変なことになっちゃうよ!



「それより、遥さん。凛花の私物化、マジでやめて。こんなとこに連れ込んで、なにをする気だったんだよ」



ホントに、なにをするつもりだったんだろう?



「……って、マジで怒りたい気持ちはあるんだけど、やっぱ、遥さんが凛花のことを守ってて」



……え?



真剣な目つきで語る鈴之助に、遥先輩も戸惑っている。



「さっき屋上で撮影してたら、こっちに向かう凛花と遥さんが見えたんだよ。あんな幸せそうに笑う凛花を見せられたら、もうなにも言えない」



「……鈴之助」



「けど、凛花を泣かせるようなことしたら、全力で叩き潰しにいくから」



「心配ご無用」



飄々としてるけど、遥先輩のこの顔はちょっと嬉しいときの顔だ。



「じゃ、撮影にもどるな」



「あ、う、うん。頑張って」



にっこり笑った鈴之助に手をあげたその瞬間、ぎゅっと鈴之助の両腕につつまれた。



……ひええっ⁈



「ははっ、凛花、ちっちゃ。それじゃ、行ってくるね。凛花、ばいばい」



ガラガラと資料室の扉がしまり、パタパタと鈴之助の足音が遠ざかる。



……び、びっくりした。



まだ心臓がバクバクしてる。



鈴之助を見送ったまま呆然としていると。



「ぐえっ」



く、苦しい!



後ろから、遥先輩の腕が私の首に巻きついた。



「鈴之助が凛花にハグしてたから、上書き」



「上書きじゃなくて、これ、ヘッドロックだよっ。死んじゃうよ!」



「凛花かの頭のなかから削除するには、このくらい激しく上書きしておかないと」



「か、仮にも彼女にすることじゃありませんっ!」



仁王立ちして告げたそのとき、校舎から甲高い悲鳴が聞こえてきた。



この悲鳴は、まさか……!