「凛花、屋上に行くぞ」



お昼休みのチャイムと同時に、ガラッと扉を開けて登場した遥先輩に、教室中の視線が一斉に向けられる。



モデルはやめたけれど、遥先輩が無駄にキラキラ光っているのは変わらない。



「今日、屋上使えないんだって」



お弁当を取り出して、眩い笑顔に目を細める。



「なんで?」



「屋上だけじゃなくて、家庭科室や音楽室がある特別棟も朝から立ち入り禁止みたいだよ。大がかりな検査があるんだって」



「ふーん。それじゃ、俺がいいとこ知ってる」



ニコニコとご機嫌な遥先輩に連れてこられたのは、つい先ほど話題に上った特別棟の裏庭で、遥先輩は1階にある資料室の窓に手をかけている。



「遥先輩、立ち入り禁止なんだよ? 勝手に入っちゃうのはよくないよ」



「大丈夫だって」



「だ、だめだよ、遥先輩」



「いいから、いいから」



ガラガラと資料室の窓をあけて、ひょいっと遥先輩が資料室に忍び込む。



「ここホコリっぽいから、いつも窓が開いてるんだよ。ほら凛花も来いよ」



遥先輩に差し伸べられた手に、ふるふると首をふる。



特別棟の入り口には黄色いテープが貼られていたし、生徒が出入りできないように見張り役の警備のひとまで立っていた。



「ここだと落ち着かないから、中庭とか体育館の横のベンチで食べよう?」



「ここなら誰も来ないから、凛花のこと好きなだけ食えるじゃん」



……は?



「ってことで、こっちにおいで」



わわっ。



ぐいっと引き上げられて、トンっと資料室に足を踏み入れる。



太陽の光を浴びて、笑顔を弾ませている遥先輩に強く引き寄せられたその瞬間、ぐいっと腕がつかまれて遥先輩から引き離された。



「こんなとこで、なにしてんだよ」



聞きなれたこの声は。



「……すずの、すけ?」



ど、どうしてこんなところに⁈