「鍵かけて、凛花のことしまっておけるわけでもないしさ。べつに10年後に結婚しようが、今、結婚しようが一緒じゃん。

この先、バカな男が凛花に声かけてくる可能性を考えたら腹立つし、そういうの面倒だし。だから、いいじゃん、もう」



「ちょっと、待って」



『面倒だし』って言った?



『いいじゃん、もう』って、そんなに雑な感じで?



「私の結婚、そんなライトな感覚で決まっちゃうの?」



「散々待たせておいて、これ以上待てとか、お前は鬼か」



「ご、ごめん」



じゃなくって!



結婚って!



「あ、あのね、遥先輩、ちょっと頭おかしい」



「はいはい、もういいよ、なんでも。つうことで、婚姻届け、書いておいて。今日
の帰りに出しておくから」



バシッと机に置かれたのは、まぎれもなく婚姻届け。



「そ、そんな! む、む、む、無理!」



出しておいてって、校内アンケートじゃないんだから!



「そもそも、なんでこんなもの持ち歩いてるの?」



恐怖!



「だって、約束しただろ?」



「なにを?」



「墓場までずっと一緒にいるって」



「そ、それはそうだけど」



「それに、書面にも残してるし」



……書面?



「いつどこでだれが?」



「俺と凛花が10年前」



いよいよ、頭おかしくなっちゃったかな?



「じゃ、証拠みせてやるからついて来い」



自信満々の遥先輩に、首をひねった。