「こんな人に淡い恋心を抱いた自分を、奈落の底に突き落としてしまいたい……」



「おいおい、心の声、駄々洩れてるから。
つうか、ひでえな……」



「その、なんとかモデル、断っちゃダメ?」



体育教官室に荷物を届けて、教室に戻りながらもう一度抵抗してみる。



「んーー。断ってもいいけど、親父の会社の損害、どのくらいだろうなー。
凛花が引き受けてくれれば、それで丸くおさまるのにな。可哀そうだよな、親父の余命って確かあと……」



悲しそうに視線を落とした遥先輩に、ハッとする。



「え、余命って、まさか……」



「まあ、うん、そうだな」



そんなこと知ってしまったら、断る理由なんて見つからないよ。



「でも、本当に顔は写らない? 私、撮影とか本当に向いてないよ? 遥先輩の邪魔にしかならないよ?」



「凛花の仕事は俺の隣に座って、俺のことを幸せにしてくれることだから」



「本当に座ってるだけでいいの?」



「メインは俺だから絶対に凛花の顔は映らないよ。ってことで、親父にOKの連絡しておくな」



「ちょ、ちょっと待って‼」



勝手に話を進めないで~……!