首をかしげる私の隣で、遥先輩が話し続ける。



「親父がブライダル事業を立ち上げることになってさ。そのプロモーションの撮影があるんだよ」



撮影ってことは、例のアレ?



去る日の撮影を思い出して、ゾッとする。



絶対に嫌だ……



「凛花、一回経験してるしいいよな」



「い、いやだ。あんな経験、もう二度としたくない……」



軽いトラウマ状態。



「凛花の顔はほとんど映らないから、大丈夫だよ」



「でも、プロのモデルさんと一緒にやるほうが……」



必死で抵抗していると、遥先輩が荷物を床にどさりと置いた。



どうしたのかな? と思ったその瞬間、トンっと壁に両手をついた遥先輩に挟まれた。



うっ……、圧倒的に不利なこの体勢。



「あのさ、今回の撮影、凛花と一緒じゃないとやらないって親父に言ってあるか
ら。凛花が引き受けなかったら親父の会社に多大な迷惑がかかるけどいいの?」



「……これって脅迫?」



「恋人からの可愛いお願い」



……恋人。



その一言に、顔が燃え上がる。



「引き受けてくれるよな?」



うっ……ドキドキしすぎて、心臓破れる。



国宝級の端正な顔立ちに、キラッキラの笑顔浮かべて、人のこと脅さないでください……!



「で、でも、私、モデルとか本当に向いてないから……」



「一緒にやってくれなかったら、ここでキスしちゃうけど?」



ぐいっと顎をもちあげられて、はい、降参。


これ以上、校内で人の道に外れた行為を許すわけにはいきません。