こんな溺愛、きいてない!

遥ちゃんは
おとなしい子だったけれど
話せない子、だとは思わなかった。


むしろ、いろいろなことを
言葉にして
伝えたいんじゃないかって
思ってた。


「凛花と一緒にいるうちに、
笑えるようになって、

ジェスチャーだけで、
凛花とはケンカもできるようになって。

いっぱい凛花に
伝えたいことがあったのに、

やっぱり、声、だせなくて
悔しかった。

そしたら、
声がでなくて焦るたびに、

今みたいに、
凛花が手を握ってくれてさ。

ほかの奴らに、からかわれても、
全く凛花は気にしなくて。

強えって思ったよ。
今も昔も、凛花は変わらない。
全然、ブレない」



「楽しかったの。

遥ちゃんと一緒にいられるのが
すごく、嬉しくて、楽しかったの。

ただ、それだけのことだと、思う」


遥ちゃんと過ごす時間は
いつもすごく楽しくて

キラキラとした思い出ばかりが
残っている。


「俺、普通の会話どころか、
返事ひとつ、まともにできないのに、

凛花は俺の隣で楽しそうに、
絵かいたり、

好きな絵本の
お気に入りの場面の話を
してくれてさ。

そういう凛花の自然なやさしさに
ものすごく救われた」


あの頃の遥ちゃんは、
はかなげで、
笑うとお花が咲くように可憐で。

今よりずっと大人しかったけれど

今と変わらず、
すごく優しかった。

それは、きっと、
言葉が話せるとか、
話せないとかじゃなくて

心が、通じていたから。

そのくらい、
遥ちゃんの隣にいることは
私にとっては

自然なことだった。