「子どもの世界は残酷だからさ、
あいつ、話せないんじゃね、とか、
キモイ、とか。

もっとストレートに
えぐいこと言われたりもしたけど。

そういうことがあるたびに、

隣で凛花が、
「あんなの、無視していい」って、
絵本読みながら俺の手、握ってくれて。

俺、ひとことも話せないのに、
凛花、不思議といつも
楽しそうにしてくれて。

そういう凛花に
すげえ救われたし、

凛花の隣にいられるのが、
ただ、嬉しかった」


穏やかに話す遥先輩の横顔に、
ぼんやりと幼い頃の思い出をたどる。


お花が咲いたように笑う遥ちゃんが、
うなづいたり、首を横に振る仕草が
とても可愛かったのは、

よく覚えている。


遥ちゃんは本当に
可愛かった。


「一緒にいるうちに、
指さしたり、首降ったりするだけで
凛花と意思疎通できるようになって、

ほかの奴らにも、凛花が通訳みたいに、
説明してくれるようになって」