遥先輩こそ、
どうして
決まった相手のひとがいるのに、

私のことを
こんなに心配してくれるんだろう……


こんなに、優しくしてくれるんだろう……


それに
親公認の相手のひとって、
……どんなひとなんだろう。


遥先輩は相手のひとと、
会ったことがあるのかな。


考えれば考えるほど
気持ちはずしりと沈んでいって。


「凛花、こっち向けって」


声をかけられて、
そろそろと
遥先輩に顔を向けた瞬間、

ふわっと唇が
重ねられそうになって。


「や、嫌だ!」


「どうしたんだよ、急に」


「どうしても!」


さっと目をそらすと、
遥先輩の指先に

顎を持ち上げられた。


視線を尖らせる遥先輩と
じっと見つめあい、

根負けしたように、
視線を落とす。


「だって、遥先輩には
ご両親が決めたひとが
……いるんでしょう?」


「親公認の相手がいるけど、
それがどうしたんだよ」


……否定すら、しないんだ。


私は遥先輩にとって、
どんな存在なんだろう。