「それならお詫びに、ここでキスして」


笑顔を煌めかせている遥先輩に、
軽蔑の眼差し。


「やっぱりひとりで帰る!」


「嘘だって、ほら、車に行くぞ」


結局、車に強制連行。


ううっ、ひどい。


「つうか、鈴之助とは
あの後どうなったんだよ」


車のなかで、遥先輩が
私の顔をのぞきこむ。


「……あれは、
嘘、だったんだって」


「え?」


「映画の役作りだったんだって。

それを私が本気にしちゃって。
恥ずかしいやら、情けないやら」


「……鈴之助がそう言ってたのかよ?」


「うん、『本気にした』って言ったら、
笑われた」


「……それこそ、気の迷いなんかじゃなくて、
本気ってことだろ」


ぼそりとつぶやいた遥先輩に
ぎゅっと手を握られた。


「……え?」


「……なんでもない。
それより、凛花、ちょっと変だよな。
どうした?」