遥先輩には、
親公認の相手がいる。

あれは、正夢だったんだ。


よくよく考えてみれば、

朝夕、車で送迎してくれる運転手さんがいて、
学校帰りに高級フレンチに寄って。


学校で遥先輩が机のうえに並べていた
パンフレットのなかには

カリブ、とか地中海の文字が
ちらりと見えていた。

冗談かと思って、
突っ込みもしなかったけれど。


でも……

遥先輩に決まった相手がいたとしても、
なにひとつ、
おかしいことなんて、ない。

それに、そのことで
遥先輩を責めることは
私には、できない。

だって、
私たちの関係は、
はっきりしないまま。


中途半端な関係のまま、
ここまで続いてしまった。


自由に青春を謳歌した先輩が、

いつか親の決めた相手と結婚して
会社を継いでいくなんて、

よくよく考えれば
わかりそうなことなのに。


どうしようもなく沈んだ気持ちで
教室に戻った。