濡れた髪の隙間から
じっとこっちを見つめる鈴之助の表情は、

アイドルというよりも、
ひとりの男のひとの顔をしている。


「あー、あの広告いいよな。

鈴之助、肌綺麗だし、色気あるから
化粧品会社からのオファーがすごいらしい」


遥先輩のその一言に、
思わず顔がほころんだ。


良かった、鈴之助、
頑張ってるんだ。


でも、
可愛い感じが売りだった鈴之助が、

気が付けばこんなに
大人の表情をするようになるなんて。


目の奥がじわりと熱くなる。


「凛花」


「ん?」


「こっち向いて」


窓のそとから、遥先輩に視線を戻すと。


「……っ!」


遥先輩の唇が、

私の唇のうえで

甘く弾んだ。