「そもそも、ちゃんと始まってないし！」

こんなの、
遥先輩の異常なトルネードに
巻き込まれてるだけなんだから！


「でも、鈴之助のためなら、
なんでも言うこと聞くんだろ？」


「そ、それとこれとは！」


……別じゃ、ない。


そうだ、
弱みを握られてることを、

すっかり忘れてた。


「つうか、もう、キスしちったし。
いっぱいキスマークもつけちったし」


「だ、だ、だまって！　
学校で変なこと、い、言わないで」


「だったら、最初から
素直に俺の言うこと聞いておけよ」


いくらなんでも。


「……横暴すぎる」


「その通り」


爽やかに答えないで！


「それより凛花、
あいつのことちょっと、

気になってる？」


「あいつって？」


「さっきの胡散臭い奴」


「胡散臭いって高山先生のこと？　
いい先生だと思うよ？　
でも、どうして？」


「休み時間に、
廊下で話してるのが

中庭から見えた」


……自分はチア部の先輩に囲まれて
鼻の下のばしてたくせに！


って、そんなことを
気にする自分も嫌になる。


「あのさ、凛花は俺以外の男のこと、
信じちゃダメだから。

男なんてろくなこと考えてないんだし。
とくにアイツは絶対だめ」


「どうして？」


「俺の勘。
あいつ、凛花に近づきすぎる」


先生だから、
仕方がないような……？


視線を尖らせる先輩に、
ため息ついて言葉を返す。


「たとえて言えば、
遥先輩は
どんなことを考えてるの？」


「凛花限定で、朝から晩まで
エロいことばっか考えてる」


最低だ。　


はあ。


昔の遥ちゃんは
可愛いかったのにな。