「白石、ごめんな、
資料大丈夫だったか」


非常勤講師の高山先生に
声をかけられて

中庭から視線を外す。


「あ、さっき預かった資料は、
先生の机のうえに
置いておきました」


「助かったよ、ありがとな。」


高山先生にぺこりと頭をさげて
教室に戻ると、

亜由と奈央が
興奮して駆け寄ってきた。


うん、今日のふたりも
とっても可愛い。


「凛花、今、高山と
話してたよね⁈」


「いいな~、
高山先生と仲良くて!」


んん?


「私、高山先生と、仲良くないよ?」


「でもさ、資料運ぶのとか、
よく頼まれてるじゃん」


「爽やかだしさ、
大人の男って感じだし、いいよね〜」


盛り上がるふたりの言葉に
目を丸くする。


「高山先生、人気あるんだね?」


「優しいし、
顔もそれなりに整ってるしね」


「生徒に理解あるし!」


「若手教師のなかで
今、一番人気だよ」


全然、知らなかった。


でも、
私みたいな地味な生徒にも

分け隔てなく
声をかけてくれるし、

先生の手伝いしたときには、

『ありがとう』って
言ってくれるし。


うん、
たしかにいい先生かも!


と、顔をあげると……


無駄に眩しい笑顔が
すぐ目の前に。


「どうした、凛花、ご機嫌ななめ?」


さっきまで中庭にいた
遥先輩がどうしてここに?


「……先輩の教室は3階だと」


と、答えたところで、

くいっと顎を
遥先輩に持ち上げられた。


こ、これは、危険!