朝起きて、ソファのうえで
ぼんやりしていると

鈴之助にポンと頭をたたかれた。


「凛花、ボーっとしてどうしたの?
今日は走りに行かないの?」


「あ、うん、ちょっと、
今日はいいや……」


「ま、いいんじゃん、
無理して走らなくても。

うちの事務所が契約してる
会員制のジム、紹介しようか?」


「ありがとう。
でも、明日からまた走るから、
大丈夫だよ」


心配そうに
眉を下げる鈴之助に笑顔をつくる。



その日は、学校でも
遥先輩と顔を合わせることなく
一日が終わった。


放課後、
下を向いて歩いていたせいで
廊下を曲がったところで

ドンっと
非常勤講師の高山先生にぶつかり、
メガネがとんだ。


慌てて眼鏡をひろい上げて
ぺこりと頭を下げる。


ダメだ、
今日は朝からぼんやりしてばかり。


ずしんと沈んだ気持ちのまま
家に帰り、扉を開けて
目を丸くする。