「も、もう、ホントに嫌〜〜っ!」

と、立ち上がって叫んだそのとき。


わ、わ、わわわっ!


思い切り、階段から足を踏み外した。


ぐらりとバランスを崩して、
落下しかけたその瞬間、

遥先輩の片腕に抱き留められた。


遥先輩の腕の中で
そろりと目を開く。


び、びっくりした……


階段から真っ逆さまに
落ちるところだった……


遥先輩の腕のなかで
ばくばくと暴れる心臓をおさえて
呆然としていると。


「はい、痛いの痛いの、とんでいけ!」


遥先輩の声とともに、
遥先輩の唇がおでこに降ってきた。


「隙あり!……つうか、
凛花、隙ありすぎ。
マジで、どうにかなんないの?」
 

「ご、ごめんなさい」


って、なんで私が謝ってるんだろう?


ここは、パリッとビシっと
毅然とした態度で…!


と、視線を尖らせて
遥先輩を睨んでみたものの。


遥先輩は
肩を揺らして
楽しそうに笑っているし!


くっ、こんなの卑怯だっ。


心臓が
破裂したらどうしてくれるっ!


じっと遥先輩を睨みつけると
甘い笑顔に包まれる。


「くくっ、凛花、顔、赤いよ。
ホント、可愛いな、お前」



ううっ、遥先輩はズルい。


本気で怒ってるのに……


ポンポンと遥先輩に
優しく頭を撫でられて


それ以上抵抗出来ずに、目を伏せた。