「いいじゃん、俺がもらってやるから」


「いやだあ、絶対に嫌だあ」


「嫌だって、ひどいな、おい」


ううっ…


「じゃ、どうしたら許してくれる?」


「許しませんが?」


涙を浮かべて
ジロリと遥先輩を睨む。


そんな甘い顔したって
ダメなんだから。


これ許したら、

今後ますます
大変なことになること、

間違えない。


「じゃ、仕方ないか」


にっこりと笑った遥先輩に 
支えられて、体を起こした…

ところまでは、よかったけれど。


手首をつかまれて
ぐるんと回転。


馬乗りになった遥先輩の顔が
すぐ目の前にせまる。
  

くっ、妙なワザを……!


「どうしたら、許してくれる?
教えて、凛花。
キスしたら許してくれる?」


ち、近いっ!


「凛花、教えて?」

 
ひ、卑怯者っ。


そんな爽やかに笑ったって、
ダメなんだから!


そもそも、やってることが
爽やかじゃなさすぎるっ!


「凛花?」


「だから
顔、近づけてこないで!」


「キスがいい?」


ギリギリまで迫りくる
遥先輩にギュッと目をつぶって
声を張る。


「ど、どいてくれたら許す!」


「わかった」


と、答えた遥先輩に
ホッと一息…ついたのは、
束の間のこと。


「遥先輩、
なにをしてるんでしょうか?」


私の首筋に顔を埋める遥先輩に
嫌な予感しかしない。 

と、遙先輩の唇に、
私の首筋がまたもやチクリと痛む。


も、もしや、これは……?


「キスマーク消えかかってたから、
お詫びのしるしに
消えなくしておいた」


「え?」


「ん?」


「……」


消えなくしておいた?


ってことは、
……しばらく消えないの?