言い切った彼は、本当に何者なんだろう。

こういう危険な世界で生きていると、やっぱり相手の考えていることって分かるものなのだろうか。…それとも、わたしが全部顔に出ているだけなのか。



(…おいしい、)



――…口に含んだイチゴミルクの飴。

この状況で自分が甘みを認識できたことに驚きながら、舌で転がす感覚もはっきりと分かる。


…多分わたし、さっきよりは気持ちが落ち着いてきた。



「顔色、真っ青だったけど少しマシになったね」

「……そう、ですか…ね」

「良かった」



――…良かった。


………何が。



(…いけない…)



ハッとした。

わたしはこれから死ぬかもしれないのに、何を考えているんだ。


助けてもらったのは事実。…でも彼は、さっきの男たちよりも酷なことを考えているのかもしれない。

彼に命を託すと決めた。だからもう足掻くつもりはない。それなのに。




…一瞬でも心を許しかけた自分は、本当にどうしようもない。




――チーン…



「降りるよ」

「…っ…」