「…そう、ですね。

約束や規則があると理解していて、その世界に居る以上。…守らなかった者が何かしらの制裁を受けるのは、当然のことだと思います」



ブレスレットに触れる。

つめたいはずなのに、確かにあたたかさを有していた。お母さんが傍に居る気がして泣きたくなってしまった。


未だ鮮血の滲む膝や手。裾に穴が開いてしまったトップスと、破けたストッキング。

…ボロボロのわたしが辿る道には、もう光なんてなくていい。



お母さん。…こんな娘でごめんね。

今から、水城朱里として生きていくのか死んでいくのか、それすら分からないけれど。



このブレスレットだけは、絶対に最期まで離さないから。

わたしはお母さんの娘であることを、本当に幸せに思うよ。



「………。」



…覚悟と決心を決めて、表情の分からない彼を見たけれど

何故か何も言わなくなってしまって、わたしは再度困惑する。


…こういう時に目だけでも見られたら、と思うのだけど

聞かれたことに答える以外の行動をしたら、それこそ逆鱗に触れてしまう気がしてならない。



――…お父さんや絵美香さんだって、わたしがいなくなったほうが都合が良いに決まってる。

あの人たちは弟含め、もう3人“で”、家族なのだから。



「あ、あの――…」



ウ――…!ウ――…!ウ――…!ウ――…!