「……すごい…」



闇空に摩天楼のごとくそびえ立つ、ド迫力の黒塗りビル。

目の前にしたら、どれだけ頑張って上を向いても最上階が見えない。高さの終わりは雲上に浮かんでいるのかと思わせる神秘さが、底知れぬ奇妙を帯びていた。


…ビルなのだけど、どこか塔のような。ここだけ時が止まったみたい。



――…だって、このビルだけ明かりが灯っていない。

ここを護るかのように東西南北に立つ4つのビルは、まばらでも所々から光が漏れているのに。


周囲の明かりと外灯で、異様に妖しく成り立っている光景が、麗蘭街の象徴として君臨しているのだ。

…黒い門の中に来なければ知らなかった世界。奇怪さすら感じる異様に、凄まじい力で惹きつけられるのが分かる。


来てはいけないところに来た。再度、それを思い知らされた気がした。



「……なんか、書いてある…?」



人工的な光と月光の両方に照らされ、ビルの入り口扉の上部に何かが刻まれているのが見える。



――…【Перестройка】