(…来た、)



「先生、おはようございます。遅れてすみません」

「おぉ御堂、当番なのだから仕方ないさ。今日も放送ご苦労だった」

「ありがとうございます」



その時

教室のドアがゆっくりと開かれ、“彼”は律義に担任に挨拶をする。

放送の時の深みと穏やかさのまま、浴びる注目は彼にふさわしいと誰もが思ってしまうほどの華やかさも携えて。



――…御堂紫苑くん。


毛先が適度に遊ばれていながら清潔感を漂わせる黒髪と、彼の纏う知的さと聡明さを表す黒縁眼鏡。制服は皺ひとつなく着こなされている。

学力試験では入学以来全科目トップを貫き、運動は何をやらせても完璧にこなす圧巻さ。

加えて整った顔立ちは「綺麗」という言葉が似合う。その声に至っては数々の人を魅了し、行事の司会は絶妙なユーモアも交えながら完璧にこなす。



そんな彼の周りに人が集まらないわけがなくて。

学年、いや学校の中で一番の人気者であり、完璧な超人のような人だ。